大きさ:径10.5cm×高30.4cm 635g
素材:天草磁器
通常ガス窯による焼成ですが、こちらは登り窯による焼成のため、薪として使う赤松の灰が溶け込んで、まるでアンティークのような雰囲気があるのが最大の特徴です。鶴首花瓶の難しいところは、どうしても炎の方向に向かって収縮が進み、傾いてしまうところです。こちらの花瓶はそれを防ぐため、ボシという窯道具を使い、焼成しています。
そして菊の花の細工は、平戸菊花飾細工技法によるもので、この技法は平成26年に佐世保市無形文化財、令和3年長崎県無形文化財に指定されました。当窯に代々伝わる伝統技法です。
平戸菊花飾細工技法は、磁器製の菊の花を、手捻りで作る技法の一つです。先端のとがった竹の道具で、磁土の塊りから花びらの形に一枚ずつ切り出します。1周したところで、今度はそれらを一枚ずつ起こしていきます。何周もくり返すことによって菊の姿が現れてきます。壺や蓋、瓶に装飾として貼り付けられます。彫り起こしたときは、花びらの一枚いちまいが鋭く立っていますが、釉薬をかけ焼成を経ると自然の菊のような柔らかさが醸し出されていきます。
制作は、長崎県・佐世保市無形文化財保持者 中里一郎によるものです。